第4章 霧の上へ〜氷の洞窟〜
びゅおぉぉ。
寒い、なんて、ものじゃない。
あの道に入ってからというもの、吹雪く風に、意識が朦朧とさえする。
あと少しで出口。
今はそれだけが心の支え。
入る時に意気込んでいたビビも、さすがにこの寒さで消沈したのか、今では最後尾をなんとか皆に付いて歩いてきている。
口を開くことすら億劫になるほど、冷たく切り裂くような寒さ。
自分の足を進めることだけで精一杯だ。
「ビビ、何やってんだ! 早くしないとおいていくぞ!」
ジタンの声になんとか振り返ると、ビビがふらふらと身体を揺らしながら歩いていた。
あの小さな身体では、この寒さは相当キツいんだろう。
「う、うん……」
支えてあげたいけど、今は自分のことで手一杯。
ビビが僅かに頷いたのを確認すると、再び私達は歩きだす。
「あっ!」
と思った瞬間だった。
ビビのふらついた身体は道から滑って、脇に広がる崖へと落ちてしまった。
「ビビ殿〜だいじょ〜ぶでありますか〜」
覗き込んで、そう高くない段差にほっとするのもつかの間、一緒に覗いたスタイナーまで落ちてしまう始末。
落ちた二人はそのまま起き上がらない。
打ちどころが良くなかった、というより寒さの限界で気を失ってしまったのだろう。
ああ、ほんと寒い。
私も頭がグラグラする。
「おっさ〜ん! 大丈夫……じゃないな。ふたりとも何やってんだよ……」
ジタンも崖下に下りて、二人を起こそうとするけど、全く起きない。
ぼんやりする視界に、スタイナーのことをおもいっきり蹴るジタンの姿があった。
「おっさん! 寝てる場合じゃねぇだろ! おっさん!!」
遠く、そんなジタンの声が聞こえた気がした。