第4章 霧の上へ〜氷の洞窟〜
『まぁ……なんて美しいところなのでしょう。うわさには聞いていましたが、これほどまでに美しいとは……』
洞窟へ入ってすぐ、私達はその神秘的な光景に魅了された。
壁、天井、床、それらを覆い尽くす雪と氷。
ガラス細工のように連なった繊細な氷柱。
こんな所でも生息することができるのか、儚げに咲く植物達は触れれば崩れてしまいそうだ。
「きれいな花……」
すぐ近くに咲く鮮やかなブルーをよく見ようと、側にしゃがむ。
天井の氷と反射して、見る角度を変えればその姿をも変える。
「姫さま! むやみにさわってはなりませんぞ!」
「ええ……わかってます」
確かにスタイナーの言うとおり、何があるか分からないもんね。
「どうでもいいけどさ、寒いんだし、早く行こうぜ」
むき出しの腕をさすって呟くジタンは本当に寒そう。
もちろん私だってすごく寒いんだけど、ジタンはノースリーブ。
寒さのレベルが違うだろう。
ガクガクと震えているジタンを見ていると、彼はふいにその動きを止め、ある方向を向いて満面の笑みを浮かべた。
突然どうしたんだろう。
「あんな所にお宝発見!」
スタスタと洞窟の片隅へ。
見ると何かが落ちている。
あれがお宝?
私も近寄ると、どうやら麻袋にポーションなどアイテムが入っているみたい。
大した物には見えないけど、ジタンは目を輝かせている。
「これがあるからやめれないよな」
ホクホク顔で麻袋の中を覗くジタンは楽しそう。
ジタンってやっぱり盗賊なんだね。
なんだか納得。
スタイナーは何も言わないのかな、と気になって振り返ったけど、ジタンが道端に落ちたアイテムを懐に仕舞い込んでるのをただ眺めてるだけ。
お咎めなし?
スタイナーの沸点が分からない。
私の視線に気づいたらしいスタイナーが、一つ咳払いをして教えてくれた。
「自分達も遠征に出掛けた際、落ちてあるアイテムを使うことはよくあります。その場に落としていった持ち主がすでに亡くなっていることも多々ありまして」
「そういうものですか」
使える物は使う。
これも生きる知恵ってことね。
「ねえ、あれ……なんだろう」