第4章 霧の上へ〜氷の洞窟〜
「それが今日の昼食になるのですか?」
私が尋ねると、ナイフに付いた血を拭き取っていたジタンが顔を上げた。
「ん? 保存食もあんまりないし、そうしようと思ってるけど……ああ、ガーネット姫は食べ慣れてないか」
「姫さま、モンスターの肉を食べるのは旅の基本ですぞ。我慢してくだされ」
「ええ、大丈夫です」
とは言ったものの、あのかわいいリスを食べるのかと思うと少し抵抗があるね。
倒してさばく所まで見ちゃったし。
せめて美味しくいただきます、と心の中で合掌。
「さきほどのモンスターはなんと言うのですか? ずいぶんとかわいらしかったですね」
「このモンスターは“ムー”って言うんだ。そういえば、精霊のムーがいるって噂を聞いたことがあるな」
モンスターの後片付けをしていたジタンが、ふと思い出すような面持ちで顎に手をやる。
「精霊?」
「ああ、モンスターみたいに襲ってこないヤツらは“精霊”って呼ばれてるんだ。モーグリはその代表例さ」
片付けをあらかた終えたジタンは、立ち上がってこちらを向く。
へえ、精霊。
同じムーでもモンスターと精霊がいるんだね。
徳を多く積んだら精霊になれたりするのかな?
と、隣を見るとビビが瞳をキラキラさせていた。
そういえば、モーグリと別れる時にも名残りおしそうにしてたし、ビビは精霊に興味があるのかな?
というか仲良くなりたいんだろう、多分。
まったく、かわいい奴め。
「さあ、行こうぜ」
ジタンの掛け声に再び歩き出して一時間、二時間。
私達は目的の洞窟へと辿り着いた。