第3章 落ちた劇場艇〜魔の森〜
漂う霧をかき分け森の出口へ向かうと、ジタンはいた。
その後姿からは、だらりと下ろした腕と、元気なく垂れたしっぽしか見えない。
ジタンが今どんな表情なのかは分からない。
どうしよう。
来てみたものの、なんて声をかければいいんだろう。
かける言葉を探していると、彼の背中がくるりと振り返った。
足音で気づいてたんだ。
振り向いたジタンは、いたって普通。
特に変わった様子もなく、口角をきゅっと上げて私に笑いかけてきた。
「もう歩けるようになったのか?」
「……ええ、もらったお薬のおかげです。これが……」
目の前に広がる、魔の森、森……だったものに視線を移す。
暗く不気味でも、しっかりと生命を灯していた自然はなくなっていた。
全てが灰色に、ガチガチとした石に成り果てている。
こんなことって本当に起こるんだ。
実際に石になった場面を目にしてないからか、アホみたいにそんなことを思った。
「森の奥にいたデカイ奴を倒したら森が突然狂いだしてこれさ」
ジタンは首を傾け、少し困ったように眉をひそめる。
「魔の森から無事に出られたのは、あなたのお友達のおかげだと……」
「ブランクっていうんだ、あいつ」