第3章 落ちた劇場艇〜魔の森〜
「うぅ~……んっ」
明けたばかりの澄んだ空気は気持ちよく、空に向かって思いっきり伸びをする。
そうは言っても、空は霧に覆われているけどね。
『気持ちのよい朝ですね』
霧が冷たく肌を刺激して、眠気が一気に覚めていく。
なんだか頭もスッキリするみたい。
クリアな脳みそはチャカチャカと仕事をしていき、一つ、私の大切な記憶を掘り起こしてくれた。
「ああっ!」
思い出した!!
『どうしたのですか、レイナ?』
昨日感じた違和感。
そうだ、彼がいない!
あのジタンの仲間だった赤髪の彼。
欠けていたピースはこれだったんだと言わんばかりに、私の頭の中でカチカチッとはまっていく。
そうだよ、これだよ。
ずっと引っかかってたの!
昨日一瞬目覚めた時には確かにいたはずなのに、ここに来てから見かけていない。
『そういえば……たしかにそうですね』
すぐそこでビビがくあっとあくびをしている。
ビビなら何か知ってるかも……
「ビビ、おはようございます」
「おはよう、お姫さま」
まだ眠そうな声を返してくれるビビへ、挨拶もそこそこに尋ねる。
「そういえば、わたくしを助けてくれた時に赤髪の男性もいた気がするのですが……彼とはいったいどこに……」