第3章 落ちた劇場艇〜魔の森〜
パチパチと穏やかにはねる火の粉。
わいわいと騒がしい空気。
そんな温かな雰囲気の中で、再び目を覚ました。
「う、うぅ……ん……」
「ひ、姫さま~っ!」
私が目を覚ましたことにいち早く気づいたスタイナーが、慌てたように駆け寄ってくる。
その背景は、夜空。
さっきまでの鬱蒼とした木々は見当たらない。
「……スタイナー?」
しんどさは残るものの、だいぶ身体の自由が戻ってきてるみたいで、ゆっくりと上体を起こす。
ここ、どこだろう。
視線をさ迷わせると、少し離れた場所に森の出口らしきものが見えた。
今私達がいるのは原っぱ。
岩がちょっとした屋根になっている場所に、焚き火とテントを設置している。
……私達、魔の森から出られたんだ。
『わたくし達……助かったのですね……』
ガーネットの呟きに、じわじわと安心感が湧いてくる。
よかった。
本当によかった。
ふいに緩みそうになった涙腺を隠して、私は息をつく。
そんな私の目の前で、スタイナーがビシッと敬礼をした。
「命に代えても姫さまをお守りするのが、このスタイナーのつとめであります!」
そんな彼の言葉をちゃかすように、ジタンがこちらに近づいてくる。
「姫さんを助け出したのは、オレの腕とビビの黒魔法だぜ!」
そして焚き火の向こう側。
恥ずかしそうに金ピカな瞳をあっちこっちに動かして、とんがり帽子をいじる少年。
ビビって言うんだ。
名前、知らなかった。
よかった。
皆ひどい怪我もなく無事みたい。
「皆さん、本当にありがとうございました」
深々と頭を下げ、お礼の言葉を口にする私。
そんな私を、三人は温かい眼差しで見返していた。