第3章 落ちた劇場艇〜魔の森〜
しだいに浮かんできた意識のはしっこ。
騒がしく、何かが争う音が絶えず響いてくる。
なんだろう。
やけにうるさい。
雷の轟くような音も聞こえてくるし、なんだか緊迫した様子な気がする。
もっと近づこう、そう思っても身体が言う事をきかなくて、いつまで経っても半端な距離感で膜が張ってあるように音が濁って聞こえる。
身体がダルくて、重くて。
全身が痺れたように動かせない。
なんで私……こんな…………。
そっか。
エネルギーを吸い取られちゃったから、力が入らないのか。
いや、それだけじゃない気がする。
身体を蝕むひどい痺れ。
なにか、毒が回ってる気がする。
そうだと分かったところで、自分ではどうにもできない。
毒消しの魔法なんて使えないし。
第一、口が動かせないから呪文を唱えられない。
……どうしよう。
もはや途方に暮れていると、やけにうるさく響いていた音が止んだ。
しばらくして、聞き慣れた声が耳元でする。
「姫さま、お気を確かにっ!!」
この声は……もしかしてスタイナー?
「ジタン、アレを飲ませるんだ」
そして自分の口だろう場所から、何かどろっとした液体が身体に流れ込んできた。
「ゴホッ、ゴホッ……」
感覚が徐々に戻ってくる。
薄く瞼をあけると、心配そうにこちらを覗く四つの顔があった。
ジタンにスタイナー、そしてとんがり帽子の少年。
それにジタンの仲間である、あの赤髪の男もいる。
私と目が合うと、誰もがほっと息をついていた。
「すぐによくなりますぞ」
「これで少し休めば大丈夫だね!」
皆の顔が綻んでいく。
もしかして助けに来てくれたの……?
あのモンスターは?
どうやってここまで?
色々聞きたいことはあったけど、そんなことより。
ここまで危険を顧みずに、私のことを助けに来てくれた皆に、お礼が言いたい。
「ぁり……ぅ……」
ああ、だめだ。
口が動かない。
まだ毒が抜けきってないんだ。
皆に、ありがとうって伝えたいのに……。
まただんだん……身体が重くなってきて。
…………
私は再び瞳を閉じた。