第3章 落ちた劇場艇〜魔の森〜
「……ん」
ゆっくり身体を起こして、きょろきょろと周りを見る目と合う。
「レイナ……ということは、あっちの身体はまだ眠っているのですね……」
「そうみたいだね」
「……無事だといいのですが」
「今私達が話せてるってことは、まだ大丈夫だとは思うけど……」
でもまあ、心配ではある。
なにせ意識を飛ばす間際の記憶がモンスターの檻の中だ。
身体のエネルギーを吸い取られて、気絶した私。
今頃いったいどこに連れていかれているのか。
「とにかく、無事であることを祈るしかありませんね」
ふと、ガーネットの顔にかげりが差した。
「やっぱり、あっちの身体が心配?」
「もちろんそれもあるのですが…………今頃城はどうなっているのかと気になって」
ガーネットも城の様子が気になるようだ。
「あんな騒ぎになってしまって……お母さまったらわたくしを助けるためとはいえ、砲撃なんてやりすぎだわ……民や貴族達でケガをした者もいるでしょうに。大きな被害でなければいいのだけど……それにケガですまない人もいるかもしれない」
そう言って、彼女は憂いげにまつげをふせる。
ガーネットの言葉に劇場艇での出来事をよくよく思い出せば、危険にさらされたのはアレクサンドリアの民だけではない。
彼女、ガーネット自身もそうだろう。
王女であるガーネットが乗っているというのに、放たれた砲撃の数々。
自分の娘に向かってだ。
普通じゃない。
今のブラネ女王はおかしい。
「ガーネット、なんとしてでもリンドブルムに行こう」
気持ちを新たにそう言ってみせれば、ガーネットも頷く。
「そのためにも、まずは魔の森を……抜け……な、けれ……ば」
ゆらゆらと彼女の身体が揺れたかと思うと、プツリと糸が切れたように倒れ込み、私は慌てて受け止める。
突然倒れ込むように眠ったけど、なにも心配することはない。
あっちの身体が目覚める時、私達はいつもこうなのだ。
そうであることを肯定するかのように、自分自身にも強烈な眠気が襲いかかる。
それに抗わず身を委ねれば、あっという間に私の意識は深い沼へと沈んでいった。