第1章 はじまり
「そうですか」
私の説明が全て終わると、ガーネットさんはその長いまつ毛を伏せて考えにふけった。
ため息が出るほど美しい、とはこの事だろう。
「さきほど空から降って来られた方は、あなただったのですね」
「はい」
空から落ちてきた自覚はある。
今でも思い出すだけで胃がひゅんとなる、恐ろしい体験だった。
ガーネットさんの話を聞くに、落ちている最中に見た、ぶつかりそうになった人というのが彼女だったということだろうか。
「私たちの記憶を照らし合わせて考えてみると……落ちてきたあなたの身体自体は潰れてしまい、意識は偶然近くにいたわたくしの身体に入ってしまったと……そういうことでしょうか」
ガーネットさんが分かりやすく話をまとめてくれた。
いや、信じられる話ではないのだけど。
でも状況を整理するとそうなってしまう。
「とりあえず、もう少し様子を見てみましょう。目が覚めたら何か変わっているかもしれません」
今の私達には情報が足りなさすぎる。
確かにもう少し様子を見てみないことには分からないことも多いだろう。
ということで、そこで難しい話は終わりになった。
ガーネットさんがそわそわとこちらを盗み見る。
なんだろうか。
「あの……あなたは地球という星から来られたのですよね?」
「はい、まあそうです」
「地球について、少しお話を聞けないかしら?」
きらきらとしたまなざしでこちらを凝視するガーネットさん。
か、かわいい。
彼女は知的好奇心にも溢れた人だったようで、ガーネットさんに訊かれるがままに自分の住んでいた場所の話をしていると、いつの間にか意識は途切れていた。