第3章 落ちた劇場艇〜魔の森〜
「スタイナー!!」
薄暗闇の中で鈍く光るその鎧は、間違いなく彼の、スタイナーの物だった。
『よかった……スタイナーも無事だったのですね』
「ひ、姫さま!!」
私がモンスターの檻に囚われていることにようやく気づいたのか、スタイナーが悲鳴をあげた。
矛先を変えるように、今度はスタイナーへと鞭を打つモンスター。
それに冷や汗を垂らしながら両握りの剣で受け止めるスタイナーの後ろ。
揺れる金髪が近づいてきた。
「なんだあいつは!? ってガーネット!?」
「ジタン!!」
よかった、彼も無事だったみたいだ。
ほっと一息つくも、状況が変わったわけではない。
モンスターに囚われているという恐怖が再び襲いかかってきた。
「このバケモノめ、姫さまになにをするつもりだ!!」
「話が通じるような相手じゃない! やるぜっ!!」
ホルスターからダガーを引き抜いたジタンは、自慢の素早さでモンスターの懐へ潜り込み横薙ぎに切りつけた。
タイミングを図って、スタイナーも別サイドからモンスターの檻に刃を立てる。
すごい。
二人共息ぴったりだ。
ぐげえっ、と私を閉じ込めているモンスターは苦しそうな声を出している。
ジタンとスタイナーを追い払うように蔦を振るうが、二人はものともしない。
すごい。
二人とも強い!!
「ぐげえっ!!」
再びモンスターが苦しげに悲鳴を上げる。
これなら、勝てるかも……!
ほっと安心が横切った時。
モンスターは大きく二人から距離をとると、次はあろうことか檻の中、つまりは私に向かって蔦を向けた。
なんで私!?
「……っ!!」
私の腕に絡みついてきた蔦がピンク色に発光すると、次第に私の身体から力が抜けていった。
座っているのもままならずその場に倒れ込む私に、ジタンとスタイナーは目を見開く。
「ガーネット!!」
「姫さま!!」
どうやら中にいた私からエネルギーを吸い取ったらしい。
モンスターの傷が治っている。
朦朧とする意識の中、再びモンスターが声を上げたかと思うと、唖然としたジタンとスタイナーが視界からどんどん遠ざかっていった。
揺れる地面。
頬に僅かにあたる風。
目の前が再び眩しいピンク色の光に埋め尽くされると、今度こそ私の意識はブラックアウトした。