第3章 落ちた劇場艇〜魔の森〜
植物をかき分け、かき分け、息を切らせて必死に走る私達。
「うわあっ!!」
後ろからドテッと転ぶ音がする。
坂を上りきった所で振り返ると、魔導師の少年が前のめりに派手に転んでいた。
「大丈夫ですか!?」
慌てて少年に近寄ると、大した怪我はしてないようで。
とりあえず、ほっとする。
少年が心配そうに後ろを振り返って、つられて私も振り返る。
「ま、まだ来てる……?」
そこにはざわざわと不気味な木々だけ。
でもそれは始めからのことだし。
モンスターの気配は感じられない……気がする。
逃げきった……のかな?
よくわからない。
少し気が抜けた時だった。
「あぁ、あぶない!」
少年の慌てた声が響いた。
しまった!!
そう思った時には遅かった。
「うわあぁ……」
気づいた時には檻越しに、尻もちをついて震えている少年が見えた。
すぐ近くでは荒れた息遣いが聞こえる。
モンスターのものだ。
……私、捕まっちゃったんだ。
驚きはすぐに恐怖に変わる。
まだ直接食されたりはしていないみたいだけど、それでもモンスターの檻の中。
怖い。
『レイナ、なんとか逃げられませんか!?』
モンスターの檻を掴もうとしてみるけど、震えてうまくいかない。
檻の向こう側。
縮こまる小さな身体が見えた。
このままじゃあの子まで。
ゴクリと唾を飲み込んだ。
「……にげて」
震える声で、目の前で同じく震える少年に声をかける。
けど逃げるどころか持っていた杖を構え始める少年。
その腕は大きくガタガタと震えている。
「なにしてるの! 早く逃げて!!」
私は目を見開いて言う。
モンスターの蔦が少年に襲いかかる、
その瞬間──
「大丈夫であるか!!」
見覚えのある騎士剣が少年の前に踊り出た。