第3章 落ちた劇場艇〜魔の森〜
この世界に来て、今いる大陸のだいたいの地理をガーネットに教わった。
私の記憶が正しければ、ここは“魔の森”という場所だろう。
『ええ、合ってます』
よかった、ちゃんと学習の成果が出てる。
『それにしても……まさかこの森に落ちてしまうなんて』
ガーネットの不安そうな声に、私は再び記憶を探る。
確か……この森に入って生きて帰ってこれた人はいない、だっけ?
『そうなのです。無事に出られるといいのですが……』
ガーネットは不安そうにため息をついた。
アレクサンドリアから出られたと思ったら、次は生きて帰れない森、か。
思わず私の口からもため息がもれる。
『ここは野生のモンスターもたくさん生息していますから、気をつけていきましょう』
かろうじて白魔法を使えるが戦う力はない私と、まだ幼い黒魔道士の少年。
少年は恐怖からか、さっきから私の少し後ろをビクビクとついてきている。
極力モンスターとは会いたくない。
早くジタン達と合流できればいいんだけど。
そんな私の不安を感じとったのか、どこからかガサッと不穏な音がたった。
「……っ!!」
少年も今の葉っぱが擦れる音が聞こえたのか、両手で杖を握りしめ身を固くさせる。
ツーッとこめかみに汗が垂れ、私はハッと真上を見た。
ぎゃああぁぁぁう!!
私が少年を突き飛ばして倒れ込んだのと、真上からモンスターが降ってきたのは同時だった。
一瞬前に私達がいた場所を、檻のようなモンスターが口を開きバクリと過ぎ去る。
「っ逃げましょう!!」
急いで立ち上がって少年の手を引っぱると、私達はその場から駆け出した。