第2章 家出騒動
ゆっくり目を開けて。
私の、ガーネットの身体は無事だった。
鼻先でサラリとした金髪が揺れる。
いつの間にか、ジタンが向かい合うように私に影を落としていた。
後ろの壁についた彼の腕がガクガクと震え、とたんその身体がずるりと私にしなだれかかってくる。
「……え……ジタン!?」
荒く呼吸を繰り返すジタンの身体は焼けるように熱かった。
たぶん、私の身体も熱い。
爆発した余波で空気全体が熱気を帯びている。
「……っ、血が出てる!!」
後頭部からタラリと血が流れ、彼の後ろにしばった髪を赤く染めている。
よく見れば、すぐそばに頭の大きさほどの金属の破片が落ちていた。
慌てて私が癒しの魔法、ケアルをかけると傷口は塞がったみたいだけど、ジタンの意識は戻らない。
ふと周囲を見回すと、辺りは酷い有様だった。
劇場艇の至る所から火が出ていて、豪華爛漫だったプリマビスタの部分部分が崩れ落ちている。
すぐ側ではスタイナーとマーカスが。
少し遠くに魔導師の少年が横たわっている。
皆、酷い怪我を負ってるみたいだ。
そっとその場にジタンを横たわらせて、まずはスタイナーをマーカスを。
そして少年へと順番にケアルをかけていく。
こんな酷く焼け壊れた状態であるのに、劇場艇は飛び続けているようだった。
熱気の狭間に新鮮な空気が流れ込んでくる。
皮肉なことに、あの爆撃で繋がれていた鎖から逃れられたらしい。