第2章 家出騒動
ぐったりとした少年を抱えて、私は飛空艇の端から街を覗く。
城の近くの建物は大きく壊され、今も阿鼻叫喚とした状態のようだった。
ひどい。
ガーネットを取り戻す為とはいえ、砲撃はやり過ぎだ。
劇場艇から大きな破片が落下したのか、近くでガシャアアン! と地響きが起こる。
再び外を覗くと、美しく整った街の途中。
グシャリと建物が潰れていた。
あそこに人がいたかもしれないのに。
心臓がぎりぎりと締め付けられる。
劇場艇プリマビスタは、徐々にアレクサンドリア城から遠ざかっていき。
やがて城下町の上空を抜け出した。
劇場艇は至る所で悲鳴を上げるように不安定に揺れながら、どんよりとした厚い雲の上を飛び続けている。
が、爆発のダメージは大きかったようで、その高度はだんだんと下がっていく。
やがて機体は雷雲に乗っかり、ずぶりと船体を沈めていった。
「……っ!」
唸る雷鳴と風にきり揉みされながら、私は必死に少年を抱きかかえる。
ぐらりぐらりと大きく船が揺れていた。
ぼふんっと音を立ててようやく雲から抜け出すと、うっそうとした森が姿を現した。
劇場艇はもはや限界だった。
木々をなぎ倒しながら、機体が大きく横に傾く。
「お、ちるっ!!!」
『レイナ!!』
ずるずると滑る身体で最後の足掻きと木製の床に爪を立てるけど、そのかいもなく。
少年を抱えた私の身体は船から放り出された。