第2章 家出騒動
ガシャアアアアアンッッッ!!!!
放たれた玉はプロペラを、凝った装飾の照明を、劇場艇の船体を壊していく。
それは鎖に繋がれた巨大な槍だった。
「うわっ!!」
バラバラと劇場艇の一部だった破片が頭上から降ってくる。
手で頭を押さえてなんとか耐えるけど、周りからは破壊音が絶えず鳴り響いている。
何本もの鎖を打ち込まれた劇場艇は、飛び立とうとしていたのを止められてしまったらしい。
不安定に大きく揺れる動きに、再び私はバランスを崩す。
「ガーネット!!!」
ジタンが慌てて駆け寄ってきて私の身体を支えてくれる。
だけど、放たれた槍の一本がすぐ側に飛来して。
その勢いで私達は吹き飛ばされた。
後ろの壁に大きく背中を打って、骨の髄まで痺れる。
「うぅ……」
ズキズキと打った背中が痛む。
姫であるガーネットの身体にまで、こんな……
さっきのだって、位置が少しでもズレていたらガーネットの身体を貫いてた。
ブラネ女王、いったいなにを考えてるの?
「姫さま~!!」
私の身を案じてか、こちらに這ってくるスタイナーの姿が揺らぐ視界に映る。
鎖を引きちぎろうともがく劇場艇の動きは激しさを増し、その船体が城を取り囲む街の建物にぶつかったようで、一層大きく船が揺れた。
「うわああっ!!」
ゴロゴロと転がる魔導師の少年が、スタイナーを巻き込んで船の端へと転がっていった。
何かに掴まっていないと、私も吹き飛ばされそう。
「ガーネット姫、大丈夫か!?」
再びジタンが駆け寄ってきてくれて、私を支えながら先ほど傍に飛んできた槍に掴ませてくれた。