第2章 家出騒動
「なんのこれしき」
ゼエゼエと息をつくスタイナーへ、ジタンとマーカスが最後の一撃を入れようとした時。
地面が揺れた。
重力が強くなり、グラリと揺らぐ足場に私は尻もちをつく。
船が、劇場艇が動き出したのだ。
大きく回るプロペラ音の狭間。
「ガーネット姫、こっちだ!!」
ジタンの声が聞こえる。
見ると、中へと続く道でジタンが手招きしていた。
本格的な脱出劇が始まったんだ。
周りを見渡すと、今まで劇を見ていた座席の貴族も屋根の上の街の人たちも、突然船が動き出したことにざわめいていた。
そりゃあ、そうだよね。
じゃあ城の様子は……?
とロイヤルシートの方を見て驚愕。
城に設置されたいくつもの大砲たちが、ギリギリと音を立てながらこちらに向きを変えていたのだ。
「うそ、大砲……?」
照準は、この劇場艇だろう。
ロイヤルシートにいるブラネ女王が、兵士たちに指示を出している様子がありありと見てとれた。
『……お母さま!?』
この船には、ガーネットも乗っているのに。
なんで、どうして……
疑問の言葉は、爆音を伴って放たれた大砲に掻き消えた。