第2章 家出騒動
「おい、おまえ、ダイジョウブか!?」
目の前で座りこんでいる、男の子かな、大きな帽子をかぶった子どもにジタンが声をかけた。
いかにも魔女がかぶっていそうなとんがり帽子を被っている。
ものすごく魔法使いっぽい。
この子が私に火を放ったのだろうか。
だとしたら一言もの申したい。
「う、うん、ちょっとコケただけ……」
転んだ拍子にズレたのか、その男の子は帽子の位置を直しながら立ち上がった。
今までは大きな帽子のつばで見えなかった、その顔が覗いて私は驚く。
その子には顔がなかった。
別にホラー的な意味じゃない。
顔に黒いモヤがかかっていて、そこから金ピカな二つの瞳だけが光っているのだ。
まあ、この世界には異形の人なんて溢れるほどいるので、この男の子の顔も種族的なものなんだろう。
ただ初めて見たから、少しびっくりした。
「えええいっ! 姫さま、覚悟なされい~っ!」
私を連れ戻すことに執心なスタイナーが飛び跳ねたみたいで、ガシャリガシャリと彼特有の鎧が擦れ合う音が後ろから響く。
男の子に向いていた意識は、スタイナーへと戻った。
スタイナーはすでに剣を抜いていた。
ジタンも私達の前に出て、ホルスターからダガーを取り出す。
向かい合っているのは、スタイナーとプルート隊員二名の、計三名。
緊張がはしる中、最初に動きだしたのはスタイナーだった。
鋭い騎士剣はジタンの短剣に受け止められる。
その横から飛び出たプルート隊員も、さっきまで主役を演じていたマーカスが止めたけど。
相手はもう一人いる。
最後の一筋は、後方で様子を見ていた私と男の子の所まで迫ってきていた。
「ガーネット姫!!」
ボワッ!
男の子の手のひらから炎が飛び出て、迫ってきていたプルート隊員に直撃。
やっぱりこの子、魔法使いだったんだ!!
プシューと煙を昇らせる隊員は、なにやら捨て台詞を吐いて去っていった。
「貴様、それでもプルート隊員かっ!」
ギリギリとつばぜり合いをしているスタイナーがゲキを飛ばすけど、その甲斐もなく。
もう一人のプルート隊員もマーカスによって追い払われて。
残すところ隊長だけとなったスタイナーに、ジタン、マーカスから攻撃が入って、スタイナーは膝をついた。