第2章 家出騒動
『なにかしら……?』
ドキドキと不安がよぎる中、それでも動かずに待っていると、すぐ側で先程の子供の声が再び聞こえた。
「来ないでーっ!!」
直後、ボアッと炎が膨らむのを連想させる音と熱さ。
……いや、本当に熱い。
舞台に上がってから照明の光でかなり暑かったけど、そんなの比じゃなくて……
「あっつい!!」
バッと目を開けると、着ていたローブが燃えていた。
なんで燃えてるの!!?
慌てて脱ぎ捨てる。
急いで火の粉を払えば、なんとか大事にはならずに済んだようだ。
危なかった。
誰だ、私に放火したやつは。
劇の途中だっていうのに、信じられない。
そして私は顔を上げると、ハッとした。
観客はもちろん、皆がこっちを見ていた。
やばっ!!
ローブ脱いだから、ガーネット姫だってバレた!?
スタイナーも呆気に取られたように私のことを凝視している。
「ジタン! そろそろ潮時だ! これで劇団タンタラスもおしめえだな!」
「ガーネット姫! 逃げるぞ!!」
そんなレア王役の人とジタンの声に促され、私は焦ったように頷いた。
「何が何だか、ワケが分からないぞ!?」
スタイナーは私が剣で刺され本当に息絶えたと思っていたらしく、私がピンピンしていることに驚いているみたいだった。
「スタイナー! わたくしのことは諦めてください!!」
これ以上追いかけられても困る。
それに、自分の意思で城を出たんだってことをまだ伝えていなかった。
主君の言葉は絶大だったのか、スタイナーの様子が僅かに揺らいだ。
「隊長! どうすれば良いでありますか!」
同じくプルート隊員であろう兵士の言葉に、スタイナーは長く考え込み。
「う~~~~~~~~~~む。そういうワケにはいかないであります~~~っ!!」
結果、反対することに決めたらしい。
『あいかわらずガンコ者だわ!』
さっきのゴキ事件のことも忘れていない私は、ふんっと顔を背けてジタンの後に続いた。
「こんなヤツはほうっておいて早く行こう!」
「ええ」
「姫さまっ!」
後ろからスタイナーに呼びかけられるけど、無視だ、無視。