第15章 ライバル宣言~マダイン・サリ~
ジタンside.
用意された布団に転がりながら、部屋の入り口から少しだけ見える夜空を眺めていた。
明日も早いからさっさと寝た方が良いのはわかっているんだけど、なかなか寝つくことができない。
ただ意味もなくぼんやりと眺めていた部屋の出入り口を、ひとつの人影が横切った。
「あれは……」
鎖骨くらいまで伸ばされたさらりとした髪。
華奢な体躯。
あれは……レイナ?
こんな時間にどこに行くのだろうか。
「…………」
少し考えて、オレは布団から起き上がることにした。
このまま横になっていても、眠れる気がしなかったから。
部屋の外に出ると、物思いにふけるようにボーっと海を眺めるレイナの姿があった。
彼女の背中で揺れる銀髪が、月明かりを受けてきらきらと輝いているように見える。
きれいだな……。
ひとつの絵みたいだ、なーんて。
柄にもなくそんなことを考えてしまうくらいには、目の前の光景はオレの目に美しく映えていた。
彼女はおもむろに自身の首飾りを握りしめ、その表情を難しくさせる。
……悩みごとでもあるのか?
「レイナ?」
「あ……ジタン……」
「眠れないのかい?」
「…………うん、ちょっと、考えごとしてて」
オレが話しかけるとレイナは少し驚いたようにこちらに振り向いたが、すぐに再び俯いてしまった。
そんな彼女の横に並ぶように、オレは土の塀に腕を置く。
「そのネックレスきれいだよな。ずっと身につけてるけど、大切なものなのか?」
「大切というか…………捨てられなくて困ってるんだ」
そういうと、言葉通りレイナは眉根を下げてみせた。
いかにも困ってますって表情。
「捨てられなくて困ってる??」
いつも身に着けてるんだからてっきり大切なものだとばかり思っていたけど。
それを捨てられなくて困ってるなんて、変わった悩みごとだな。