第15章 ライバル宣言~マダイン・サリ~
私は布団を握りしめるダガーの手に、自分の手を重ねた。
「思うんだけどね、ダガーに会えてエーコはきっと嬉しかったと思うの。私だったら絶対に嬉しい。もうこの世には自分しかいないと思っていた召喚士の仲間に出会えたんだから。きっとそれだけでも、ダガーが今召喚魔法を使えることに意味があると思うよ」
「レイナ……」
「だから、私はダガーが召喚魔法を使えてよかったと思ってるよ。一緒に戦うときだって、すごく心強いしね」
「…………ありがとう」
ほどなくして、隣から静かな寝息が聞こえてきた。
私はレンガ調の無骨な天井を見つめながら、小さく息をつく。
だめだ、寝付けない。
私は諦めて布団から起き上がった。
「うわぁ………きれい……」
外に出ると、冷たい風とともに視界が許す限りの満天の星空が出迎えてくれた。
澄んだ濃紺の空に銀の光が散り、それを飾り立てるように目下の海面が揺れる。
空には白と赤の二つの月。
ガイアの夜空。
日本よりもずっとずっと広く世界を感じる。
首元でチャリっと鳴る金属音。
視線を下げると、私の胸元で静かにネックレスが揺れていた。
クジャにもらったネックレス……。
シンプルで控えめなデザインではあるけど、質の良さからか上品さがある。
捨てようかと思ったこともあるけど、なぜか手放すことができなかった。
目を細めて私の頭を撫でる彼の顔が頭の中に浮かんでは消える。
何度も考える。
クジャにこの身体をもらわなければ、私は今ごろ消えてなくなっていたのかな。
消えるって、どうなるんだろう。
死ぬってこと?
わからない……。
皆と一緒に旅を続けていけば、きっとそのうちクジャに出会うだろう。
目的はどうであれ、私を生かしてくれたクジャ。
クジャは命の恩人なんだ。
不幸になってほしいわけじゃない。
傷ついてほしいとも思っていない。
私は彼と戦ってもいいの?
「…………っ」
あのままじゃいけないと思ってクジャの元から逃げてきたくせに。
クジャとの関係にケリをつけたくて村を出たくせに。
自分がどう行動すべきか、ずっと決めきれないでいる。
「皆で幸せになれたら……なんて、都合がよすぎるのかな……」
私はもう一度、ネックレスを握りしめた。