第15章 ライバル宣言~マダイン・サリ~
エーコに借りた布団を空いたスペースに広げて、寝る準備をする私とダガー。
彼女の横顔をちらりと盗み見ると、何だか浮かない表情。
食事中も気になっていたけど、マダイン・サリに来てからダガーの表情はずっと暗い。
マダイン・サリは召喚士一族の村だって言ってたし、同じく召喚魔法を操ることのできるダガーにとっては思うところがあるのだろう。
完全に日が落ちて、辺りが真っ暗になれば特にすることもなく。
私たちは明日の出発に向けて早めに布団に入った。
何だか眠れない。
エーコに召喚士一族の話を聞いたり、今日は色々あったから。
時折隣の布団からも衣擦れの音が聞こえてくるので、ダガーも眠れないでいるのだろう。
「ダガー、起きてる?」
声をかけてみるともぞりと布団が音を立て、少しの間をおいて控えめな声が返ってきた。
「…………ええ、起きてるわ。レイナも?」
「うん、なんか目がさえちゃって」
「わたしも…………ずっと頭の中で考えてしまうの」
「召喚士のこと?」
「そう……」
もぞりと音を立てて、ダガーがこちらに顔を向けるように寝返りをうった。
「…………わたしね、召喚獣なんてなくなってしまえばいいって思ったこともあるの」
今までの彼女のことを考えれば、ダガーがそう思ってもおかしくはないだろうなと思えた。
召喚獣がいたからブラネ女王はダガーを捕らえ、戦争のために利用しようとしたから。
「なのに……それを奪われた時、自分の大切な何かを失った気がした……」
「うん……」
「今日ね、召喚壁っていうものを見せてもらったの」
「召喚壁?」
「この村の人たちが実在の召喚獣を描いた壁らしいんだけど……それを見てると、わたし……」
かけていた布団にぎゅっと顔を寄せるダガー。
「わたしは、どうして召喚の力を持っているのかしら……」
「ダガー……」