第15章 ライバル宣言~マダイン・サリ~
「わっ! わわ~っ!!」
隣からビビの驚いた声があがった。
「み、見覚えのある……ヒゲみたいなものが」
これって、これって……?
「……ブリ虫?」
「あら、山ブリ虫ってコンデヤ・パタの名産なんだから!」
「いやあぁぁぁ!!!」
「お、落ち着け、レイナ!」
ガタッと大きな音を立てて思わず立ち上がってしまう。
わ、わ、わ、私、ブリ虫が入ってたシチュー食べてたの……?
嘘でしょ?
誰か嘘だと言って……。
「レイナ、大丈夫か? レイナー? ……これは聞こえてないな」
「ブリ虫って地域によって食用になったりするのね」
感心するように言ったダガーに、ジタンが意外そうな声をあげた。
「あれ? ダガーもブリ虫苦手じゃなかったっけ?」
「わたしは平気よ、レイナは昔から苦手だけど」
「…………そうだっけ?」
卒倒しそうになる私は、首を傾げているジタンに気づくことなんてなかった。
「ごちそうさま~」
食事が終わり、各々好きに席をたっていく。
えらいものを食べてしまった……。
今度からブリ虫は料理に入れないように、後でエーコにお願いしよう。
立ちあがり伸びをしているジタンに、エーコが話しかけているのが耳に入った。
「ど、どぉ? 毎日、食べたくならない?」
「ま、それはおいといて、他にもエーコに聞きたいことあるんだけどさ」
「おいといて!? すんごくすんごく失礼しちゃうわっ!!」
エーコのアピールを「それはおいといて」の一言で流したジタン。
ジタンってあんなに分かりやすいエーコからの好意に気づいてないのかな。
実はものすごい鈍感だったりする?
「ジタン、テーブル片づけるから食器もってきてっ!!」
案の定プンスカと頬を膨らませたエーコは、それだけ言うと台所の方へと去っていった。
ぽりぽりと頭をかくジタンに声をかける。
「今のはジタンが悪いんじゃないかな」
「……やっぱオレなの?」
はー、と肩を落とすと、ジタンはテーブルの上の食器をひとまとめに持ち、エーコを追いかけていった。