第2章 家出騒動
私は今、たくさんの観客の視線が集まる舞台の中央。
そこに寝っ転がっている。
なんでそんなところにいるのかって?
それはむしろ私が聞きたい。
スタイナーから逃げていたと思ったら、気づけばこうなっていた。
『これでコーネリアの役はおしまいですね』
ガーネットには本当に感謝だ。
ジタンに連れられるがままにやってくれば、いきなり舞台の上だったから驚いた。
しかも私にヒロイン、コーネリア役をやれっていうじゃないか!
この私に!!
ガーネットが『君の小鳥になりたい』のセリフまで暗記していたからなんとかなったものの、そうじゃなかったら大変なことになってたよ。
『でも最後のシーンはなかなかの演技でしたよ、レイナ』
なんて、ガーネットが褒めてくれるから、私はもう少しの間死体の演技でも続けていようと思う。
「父を許してくれーっ!!」
「姫さま~~~っ!!」
相変わらず演技力の高いレア王と、スタイナーの、これは演技じゃないだろう言葉に囲まれつつ、幕引きを待つ私。
会場からもすすり泣く声が聞こえてきて、感動の最後を飾るのに相応しい空気が流れている。
このままラストまでいければ、怪しまれずにすむよね。
そんな安心感に包まれて少し気を抜いていた時だった。
バタバタとこの雰囲気に相応しくない、不穏な足音が遠くから聞こえてきたのは。
「ごめんなさーい!」
子供かな?
幼い声と共に複数のガシャガシャと走る音。
それはだんだんと近づいて、ついには足音が舞台にまでやってきた。