第15章 ライバル宣言~マダイン・サリ~
料理対決なんて挑まれた時は正直困ったけど、今となってはエーコに感謝の気持ちしかない。
幸せに浸りながらシチューを口に入れると、その美味しさにびっくりした。
皆も同じように感じたようで、それぞれの口から次々と称賛の言葉が出る。
エーコもまんざらでもない顔で「へへ」と笑っていた。
なんか楽しいな。
ずっとこんな時間が続けばいいのに。
今だけは自分の見た目も、世界に戦争が起こっていることも、全て忘れられる気がした。
ただご飯が美味しいってだけで、みんな笑い合えるようになればいいのに。
そっか、ジタン達は、そのために旅をしているんだ。
私も、その旅の一員なんだ……。
私はなんだか誇らしい気持ちでいっぱいになった。
改めて、この人たちについていきたい。
そんな思いを胸に、再びシチューをすくった。
お皿の半分が空いた頃、ジタンがふと口を開いた。
「ところでエーコ、他の召喚士はどこにいるんだ?」
それは私もずっと気になっていたこと。
この村に来てから、不自然なほどに人を見かけていない。
村にいるのはモーグリだけで、なんだかダリの村を訪れた時のような不自然さを感じる。
「ひとりも見かけないけど……まさか地下にいるなんて言うなよ?」
ジタンも同じことを考えていたようで、地下で大人が働いていたダリ村を比喩にして尋ねると、エーコから思いもよらない反応が返ってきた。
「地下? うん、そうよ」
エーコは当たり前のことを言うように言葉を続ける。
「みんな、地面の下で眠ってるの」
「え……」
言葉を失う。
地面の下で眠ってるって……。
それじゃあ、この村の人たちは皆死んでるってこと……?
ジタンの言葉はとんだブラックジョークになってしまったらしい。
エーコは衝撃を受けている皆の顔を見て、持っていたスプーンを置くと改めて言葉を発した。
「エーコ、一族最後の生き残りなの」