第15章 ライバル宣言~マダイン・サリ~
「もしかして、村の入り口にお出迎えに来てた?」
「ボクは釣りをしてたから行ってないけど、みんなが噂してたクポ。この村に珍しく人間が来た、って」
目の前のモーグリの口ぶりに違和感を覚える。
珍しく人間が来た……?
まるで、黒魔道士の村の皆が言いそうな言葉。
「あ……」
垂らしていた糸がぴんと張り、竿がぐんとしなった。
モーグリが小さな腕に力を入れると、次の瞬間、ざばんと大きな音を立てて水面から水色の魚が飛び出した。
「うわあ……!!」
魚の鱗が光を受け、きらきらと輝いている。
モーグリが腰かけていた板の間でビチビチと跳ねている魚の口元から釣り針を器用に取り外すと、「クポ」と言ってモーグリは魚を差し出してきた。
「君ははじめてエーコ嬢が連れてきた客人クポ。持っていくクポ」
「え、いいの? ……ありがとう!!」
未だ板の間で跳ねている魚をおそるおそる持ち上げてみると、思った以上に重量がある。
これなら一匹で十分かも。
改めてモーグリにお礼を言うと、私はさっそく魚の調理をしていくことにした。
といっても、全体に塩を馴染ませて後はファイアで炙ってしまえば完成。
思った以上に料理がすぐに出来上がってしまい、私はすぐに暇を持て余した。
エーコの様子を盗み見てみると、彼女も下ごしらえは終わっているようでお鍋に火をかけているようだけど、何やら誰かと話をしてるみたいだった。
ってあれ、クイナじゃん。
エーコと話しているところをみると、もう和解はできたのかな?
「おーい」と声をかけると、すぐにこちらに気づいてくれたらしくクイナが振り向いた。
「レイナ、ちょうどいいところに来たアル!!」
こいこいとクイナに手招きされるがままに近づくと、エーコがぎょっとした顔でこちらを見つめた。
「ちょっと手伝うアルよ」
「手伝うって、どうかしたの?」
「火力が足りないから、レイナにファイアをして欲しいアル!」
どうやら、竈門の火力が足りなくて困っていたらしい。
たしかに鍋の大きさと火の強さを比べてみると、火が少し弱いように見えなくもない。
「それならお安いご用だけど……」