第15章 ライバル宣言~マダイン・サリ~
魚なら、塩をふって焼くだけでおいしくなるかも。
うん、私でも作れそう!
とはいっても、釣りなんてしたことはない。
ふと、視界の隅で釣り糸を垂らしているモーグリの姿を見つけた。
そうだ、わからないなら聞けばいいじゃない。
「ねえねえ、この辺って魚釣れるの?」
「ク、クポ!?」
私が話しかけると、釣り糸を垂らしていたモーグリが驚いたように振り返った。
「びっくりしたクポ! 急に話しかけないでほしいクポ!」
「ご、ごめんなさい……」
突然の事で驚かせてしまったようで、落としそうになったらしい釣竿をわたわたと持ち直している。
話しかけただけなのに、そんなに驚かなくても……。
細目でよくわからないけど、少し怒らせてしまったらしい。
頭上の赤いぼんぼりをふるふると揺らしながら、息を整えている。
そして一呼吸おくと、モーグリは改めて釣り糸を垂れなおしてから、横目でこちらに目配せをした。
「それで、何クポ? 見ての通り、ボクは釣りで忙しいクポ」
「のんびり釣りしてるだけに見えるけど……」
「用がないならあっち行くクポ!」
「ああ、ごめんごめん!」
水面に視線を戻そうとする目の前のモーグリを見て、慌てて謝る。
余計なことを言ってしまった。
ひとつ咳払いをして仕切り直すと、私はさっそく用件を伝えることにした。
「えっとですね。実はとある事情で新鮮なお魚が欲しいんだけど、この辺りって魚釣れるのかなーって聞きたくって」
「まあ、釣れなくはないクポね。じゃなかったら、ここで釣りなんかしないクポ」
「なるほど、たしかに」
私は水飛沫を勢いよくあげる滝壺を覗き込んだ。
白く跳ねる水の勢いでわかりにくいけど、いくつかの魚影がひらひらと辺りを泳いでいる。
「君、エーコ嬢と一緒に来た人間クポね」
「私のこと知ってるの?」