第15章 ライバル宣言~マダイン・サリ~
潮風が私の髪をなでる。
水しぶきをあげる滝つぼの向こう側に広がる青々とした大海原。
時折響く甲高いウミネコの鳴き声。
すーごい素敵なロケーション。
エーコの家の台所、ちょっとロケーション良すぎない?
青空教室ならぬ、青空キッチンのような開放感だ。
磯のかおり。
私このにおい好きなんだよね。
通学路の橋を渡ってると、いつもこのにおいがしてたっけ。
磯のかおりって地球とガイアで変わらないんだ。
「…………」
ふと視線を下げると、木製のまな板と包丁が目に入った。
これは先ほどエーコに渡されたもの。
いけない、現実逃避をしてる場合じゃなかった。
「はあ~、料理って言われてもな~」
私は大きくため息をつく。
どちらが美味しい料理を作るか勝負をしようと、なぜかエーコに持ちかけられたのは数分前の話。
だけど、急に何か料理を作れとまな板と包丁を渡されたって困るのだ。
胸をはって言えることじゃないけど、私は家庭科の授業くらいでしか料理をしたことがない。
こんなことならもっと家事を手伝っておけばよかった……。
今さら後悔したって遅い。
少し離れたところで、エーコがモーグリたちとわいわい話をしていた。
「エーコはすごいなぁ」
私よりもうんと年下だろうに、料理も作れるみたいだし、かなり自立していると思う。
こんな娘を持てた親御さんはすごい鼻高々なんじゃないかな。
忙しいのか、いまのところ会えてはいないけど。
話し合いが終わったのか、エーコの周りを囲んでいたモーグリたちがちりぢりになっていった。
私もそろそろ作り始めないと。
「って言っても、まずは材料がないよね」
料理以前の問題。
この辺にお店……はなさそうだったし。
まさか、現地調達……?
野菜とかだったら、その辺に生えてたりするかな……。
いやいや、この世界の食材の知識なんてないし、どこに採りに行けばいいのかわからないし。
お肉は……ますますもってわからない。
「だったら海が近いし、魚なら釣れるかな?」