第15章 ライバル宣言~マダイン・サリ~
「エーコ、ありがとう」
「もうちょっと遅かったら、危なかったんだからね!」
「ご、ごめんなさい……」
エーコに叱られて、しゅんと落ち込むビビ。
それにしても、エーコはこの一瞬の判断で私たちに魔法をかけたんだ。
やっぱり戦闘に慣れているとしか思えない。
「さて、どうしよう……」
目の前で今にも暴れ出しそうな緑色の巨体を見やる。
戦況がよくなったわけではない。
ジタンが再び前線に繰り出そうと体制を整えていると、不意にエーコが前に出て振り返った。
「ここはエーコにまかせて!」
何か考えがあるのかな?
そう思って、その場でじっと目をつぶって立っているエーコの後ろ姿を数秒見つめる。
そして、エーコはぴょこんと飛び跳ね、持っていた笛を高く掲げた。
「フェンリル!!」
次の瞬間、緑の巨人の真下から太い何かが飛びだしてきて、巨人が空高く弾き飛ばされた。
あれは……大きな拳?
大きなグーパンチが地面から生えてきた!?
巨人は弾き飛ばされた……もとい、殴り飛ばされた衝撃で、どこかに飛んでいってしまった。
その場にはひび割れた地面と呆然と立ち尽くす私たちだけ。
「……何、今の」
思わず私がつぶやくと、エーコが自慢げな顔で振り向く。
「ちょっとみんなの力を借りたの」
「みんな?」
「そう! 召喚獣のみんな!」