第2章 家出騒動
「コーネリアよ、さあ、父と一緒に城へ帰るのだ」
「嫌です! わたくし、もう嫌です!」
感情の乗った声を上げて、コーネリアはレア王に首を振ってみせた。
彼女の演技に呼応するかのように、レア王も悲哀に満ちた表情で嘆く。
「コーネリア……もう、これ以上、父を困らせないでくれ。おまえの為を思ってこその結婚なのだ……、分かってくれ……」
それぞれの思惑が交差する中、マーカスが一際強い想いを持って前へ出る。
「そうはさせまいぞ、レア王! 今こそ、年貢の納め時! 親の仇、そして、愛するコーネリアのため……この刃にものを言わせてやる!」
そして腰に携えていた剣を抜き放ち、刃をレア王へと向けたとき。
「うッ!!」
突き出した刃は、コーネリアの身体を貫いていた。
「ど、……どうして!?」
倒れ行くコーネリアの身体から、弱々しい声が響く。
「マー、、、カス、ごめんね。こんな人でも、わたくしの父なのです……」
あれだけ愛する者との関係を認めてもらえなくても、コーネリアにとって父は大切な存在だったのだ。
それは父、レア王も同じだったのか、いや、無くして初めて気づいたのか、これまで娘を政治の駒として扱っていた父も哀しみに染まった声で娘の名を呼んだ。
「父上、わがままばかりで申し訳ありませんでした。でも、どうかマーカスを許してくださいまし……」
それがコーネリアの最後の言葉となった。
「なんてことだ! もう、コーネリアの声は聞けないのか! もう、コーネリアのあたたかいぬくもりには触れられないのか! こうなれば、もう生きている意味はない!!」
後を追うようにして、マーカスは自分自身にも刃を突き立てたのだった。