第15章 ライバル宣言~マダイン・サリ~
「で、そのエーコさんはなんでまた、盗みなんてはたらいたんだ?」
エーコのわかりやすい矢印に気づいているのかいないのか。
ジタンがそう切り出すと、エーコは一瞬、しゅんとしたように肩を落とした。
「……おなか……すいたの」
「ははっ、そりゃまた立派な理由だ……」
私は二人のやり取りを聞いていて、ちょっとしたショックを受けた。
まず、エーコくらいの歳の子がお腹がすいて食べ物を盗んでしまっている事実と、ジタンがそれを笑って済ませたこと。
分かってはいたけど、私が生きてきた環境とは違うんだってことを改めて感じる。
話し続けるジタンが、ふと思い出したように呟いた。
「まるでクイナみたいな……そういやあいつ、本当にモーグリ追いかけてったのか?」
ジタンの呟きにエーコがサァっと顔を青ざめる。
「ど、どうしよう……モグが食べられちゃう……」
「まさかクイナもモーグリを食べたりはしないと思うけど……」
いや、でも私からすれば、クイナが好物として嗜んでいるカエルだって食べ物じゃないと思ってるわけだし。
モーグリを食べないとは言い切れないんじゃないかな?
……うん、はやく追いかけた方がいいかもしれない。
「ねえ、エーコの家はこの先なの?」
ふとダガーが尋ねると、エーコはこくりと頷いた。
「うん、ずぅ~っと向こう。多分モグは先に帰っちゃったと思う……」
「ねえ、この子を家まで送ってあげましょ」
「そうだね、私達も同じ方に用事があるわけだし」
それに、クイナもモーグリを追いかけていっちゃったし。
ダガーの提案に賛成すると、私とダガーでジタンの方をじっと見つめる。
大きな選択をする時に、私たちは自然とジタンの判断を待つことが多い。
それは何も言わずとも私達がジタンのことをリーダーとして認識しているからに他ならないのだと思う。
「そうだな……色々気になることもあるし、そうするか。ビビもいいか?」
「う、うん……」
後ろを向いていたビビが、エーコの方をちらりと見やると帽子を揺らした。
あまり乗り気ではなさそうなビビの様子を見て私は苦笑いする。
こうして、私達の旅路にしばらくの間、小さな同行人が加わることになった。