第15章 ライバル宣言~マダイン・サリ~
「さっき言ってたのって……」
「うん、多分あの子だと思う」
「だよね」
こそこそとビビと小声で頷き合う。
どうやら目の前でひっかかっている女の子は、さっきまでドワーフの里を賑わせていた食べ物どろぼー張本人らしい。
とは言え、ビビと同じくらいの歳の子に見えるし。
なんか、ちょっとかわいそうかも。
「あの〜、大丈夫? ……じゃないよね」
思わず声をかけると、女の子はその頭をむくりと起こした。
頭につけた大きなリボンが、肩で切りそろえられた紫髪にかわいく映えているのが印象的。
「ああ、まぼろしかしら? 角のない人まで見える……しかもシッポまで生えてるし……」
シッポが生えてるのはジタンのことだとして、……角?
あ、よく見ると、頭に角生えてる!
大きなリボンの手前。
女の子の額からはちょこんと一本の角が生えていた。
そして、その角が生えた頭をきょろきょろ。
「へ!?」
女の子はぎょっと目を剥くと、再び両手足をバタバタと動かし始めた。
「きゃ~~~っ! たぁすけてぇ~~~~っ!」
助けようと思ったのに、なんで逃げようとするのさ。
と思ったけど、その理由を思い出す。
「だ、だめよ、あたしを食べるなんて! それに、おいしくないわ、きっと!」
「おいしくないってよ、クイナ」
「そうアルか……それは残念アルな……」
残念そうに長い舌をべろりと動かすクイナ。
さっきモーグリが一目散に逃げていったのも、彼が原因。
二人とも、クイナに食べられると思ったのね。
まあ、さすがのクイナもモーグリや人間は食べないでしょう。
……多分。
「そう言えばさっきのモーグリ、見たコトのない色してたアルね……じゃあワタシ、さっきのちっこいモーグリ食べにいくアルよ」
「そ、それもだめぇ~~っ!」
女の子の抵抗虚しく、モーグリが逃げていった方へどすどすと向かうクイナ。
そのクイナの歩く衝撃で女の子の体がふわりと浮いた。
「きゃっ!」
危ない!
と思ったけど、落ちてきた女の子をジタンが難なくキャッチ。
さすが。
「よいしょっ……と」
「……あ、ありがと」
ストンと降りた女の子はもじもじと後ろに手を組んで、頬を赤らめた。
……ん?