第15章 ライバル宣言~マダイン・サリ~
苔が張り付いた木の根の上を歩いていく。
天気は晴れ。
外を歩くには絶好の天気だけど、地上うん十メートル上空に張る根の道を歩いているので、あまり生きた心地はしない。
何か話して気を紛らわそう。
そうだ。
「さっきのどろぼーってどんな人だったんだろうね」
「走っていく姿ならボク見たよ」
「ビビ、どろぼーのこと見たの?」
「うん、たしか小さい子と……モーグリも一緒だったような」
小さい子とモーグリ?
なんか思ってた人物像と違うかも。
どろぼーって言ってたから、てっきり大柄な男性とかだと思ってた。
「あれ……?」
ようやく向こう岸に辿りついたと胸をなでおろしたタイミングで、隣を歩いていたビビが小さく首を傾げた。
留まったビビの視線を辿ってみると、その先には空中で両足をじたばた動かしている女の子の姿。
と、その周りをぐるぐると飛び回る小さいモーグリ。
もしかして、ビビが言ってた食べ物どろぼーって、あの二人?
「モグ、早く早く! 急がないと捕まっちゃうよぉ」
「クポッ!」
どうやら女の子は背中に付けた羽飾りが張り出た枝に引っかかって取れないらしい。
女の子の周りを心配そうに飛び回っていたモーグリがこちらに気が付いたらしく、橙色のぼんぼりを頭上でぴくりと動かした。
「ん? どしたの、モグ?」
「ク、クポ~~~~っ!!」
そして一目散にその場から飛び去るモーグリ。
その理由はすぐに分かった。
クイナがモーグリに向かって、その長い舌をべろりと動かしていたから。
あぁ、もうあの人は……モーグリにまで。
「こ、こら待てぇ~! 逃げるなぁモグ~~~! はぁっ……こんなところにひっかかって……信じていたモグにも裏切られ、ここでさみしく死んでいくのだわ……」
モーグリが飛び去った方へ手を伸ばした女の子は、すぐに全身力が抜けたように項垂れた。
ぷらぷらと揺れる体が哀愁を放っていて、少々いたたまれない光景である。