第14章 仲間になるために〜コンデヤ・パタ〜
結婚式を挙げた男女だけが、向こう側へ通してもらえる。
そんな急に結婚なんて言われても!
反射的にそう思ったけど、でも珍しく私でも役に立てるかもしれない、とも思ったり。
それに形式的にでも儀式さえしちゃえば、向こう側に行けるってことだもんね。
「ここんとこ、神聖の儀を受ける者がいないって神主様が嘆いてたド。これはめでたいことだド!」
「だってさ、レイナ。どうする? オレたち夫婦になっちゃう? なーんて……」
「うん、そうしよう」
「へ!?」
「だって神聖の儀を受けないと聖地に行けないんでしょ?」
「いや、まあ、そりゃそうだけど…………レイナ、わかってるのか?」
ジタンにしては珍しくあたふたした様子で確認される。
大丈夫、ちゃんとわかってる。
この村を出るまで、夫婦のフリをしなきゃいけないってことだよね?
短時間なら、私でもきっとやり遂げられると思う!
「大丈夫、私頑張るね!」
未だに驚いた顔をしているジタンを見つめて意気込むと、なぜかジタンはさらに驚きに目を見開いた。
「山樹におわします、やおよろずの神々と~」
神主様の粛然とした声が広間に響き渡る。
高台になったステージ上から降り注ぐその声を、私とジタンは小舟のような祭壇に並んで立って聞いていた。
「陽のもと光と共にこの者ドも、ふたりの旅立つこの地に~」
読み上げる声の合間に、リズムをとるようにポンポコポンポンとお囃子が鳴る。
神聖の儀が執り行われるまでにあまり時間はかかってなかったけど、思った以上にちゃんとしてる。
聖地に行くために神聖の儀を行うと決めて。
正式に神主様に話しにいくまでも、何度もジタンが「本当にいいのか?」「ケッコンだぞ? ケッコン」と鬼気迫る様子で確認してきた。
「でも、そうしないと向こう側に行けないんだよね? 確かにジタンは私とじゃ嫌かもしれないけど……」
「いや、レイナとが嫌とかじゃなくて……」
「できるだけジタンが嫌な気持ちにならないように、ささっと終わらせちゃおうね!」
私がぐっとこぶしを握ってみせると、ジタンはなぜか項垂れた。