第13章 いつか帰るところ~黒魔導士の村~
ダガーと一緒にしょんぼりと肩を落としていると、村の中からとたとたと走る足音が響いた。
「まってよぉ~」
「ビビ?」
「この村のみんなにね、たのまれたんだ。もっと外をみてきてほしい。それでまた色々教えてほしいって」
肩を上下させるビビはそう言って瞳をきらめかせる。
ってことはビビも一緒に行くってこと?
再会してからちゃんとビビと話せてなかったから、私としては非常に嬉しい。
さらに個人的な気持ちとしては、旅に癒し要因がいるってことが非常に非常に嬉しい。
「ちっ、なんだ、せっかく両手に花で旅できると思ってたのに」
「ナニ言ってるアルか。ワタシこんなとこに置いてかれたら飢え死にしてしまうアルね」
舌打ちをするジタンにツッコミを入れるようにドタドタとやってきた声が現れる。
あ、昨日クジャのにおいを当てたコックの人だ。
昨日のことがあるから、実はちょっと苦手意識があるんだよなあ……。
「そういや、お前もいたんだっけ……」
「それじゃあ行きましょ!」
肩を落とすジタン。
その隣で彼の様子を一ミリも気にしていないように声を弾ませるダガー。
ダガーのスルースキルが高い……。
一同が外への道に向かうなか、ちょんちょんと腕をつつかれて振り向くと、ビビが嬉しそうな表情で私を見ていた。
ん? なんでしょう?
「レイナさん……ダガーお姉ちゃんと仲直りできたんだね!」
ダガーの背中を見て、私にだけ聞こえるような小声でよかったねとこっそりと呟くビビ。
そんな彼の姿に胸がきゅうんと締め付けられる。
ああもう、なんでこの子ってこんなに撫でたくなるんだろう。
とんがり帽子をわしゃわしゃとしたい衝動を抑えながら、私は笑顔で頷く。
前とはメンバーが違うけど、またみんなと旅ができるなんて。
旅の道具を詰め込んだ斜めがけのカバン紐をぎゅっと握ると、私は皆の後を小走りで追いかけた。