第13章 いつか帰るところ~黒魔導士の村~
「レイナ……本当に行っちゃうの?」
まだ日が高く昇りきらない時間。
しょんぼりした瞳でユウがこちらを見つめている。
「うん、色々終わったらまた帰ってくるね……まあ一生会えなくなるわけじゃないんだし、そんな悲しそうな顔しないでって」
「だって~」
「ユウ、あんまり引き留めたらレイナが行きにくくなっちゃうだろ」
ぐじぐじと大きな体を揺らすユウの背中を、しょうがないというようにサウスがなだめる。
その様子は仲の良い兄と弟って感じ。
出会った頃を知っている私からすると、ずいぶん二人も仲良くなったなあ、なんてしみじみしてしまう。
「それじゃあ、二人とも元気でね」
「レイナこそ気をつけて」
「すぐ帰ってきてね~!」
二人の見送りを背に、私は村の入口へ急いだ。
もう出発しようとしているのか、村の出入り口にダガーの姿を見つける。
「ダガー!」
大きく手を振ってみせると、こっちに気が付いてぱっと顔を明るくさせた後、すぐに彼女は寂しそうに表情をゆがめた。
ダガーをこんな表情にさせるくらいなら昨日の夜、言えばよかったかな。
私も一緒に行かせてって。
なんて申し訳ない気持ちもあるけど、でもこれから旅に出るんだって思うとわくわくする気持ちも止まらない。
口の端がにやけてしまうのを我慢しながら。
さあダガーに伝えようと思っていると、急にがばりと抱きしめられた。
「え? ダガー?」
「色々終わらせたら、絶対にまた会いにくるわ!」
ぎゅっと抱きしめられる腕に力が入る。
なんか、思ってたより別れが大事?
確かに次会える保証はないけども。
だけど。
うわあああああ、なんか言い出しにくい空気になった!