第13章 いつか帰るところ~黒魔導士の村~
静かな虫の鳴き声が響きわたる道を歩きながら、私はぼんやりと考えていた。
黒魔導士の村……なのかな。
村の皆には助けてもらった恩があるし。
でもここに来たのは数日前のことで、ここが私の帰るべき場所なのか……正直わからない。
私の『いつか帰るところ』はどこなんだろう。
私はこの世界でどうやって生きていきたいんだろう。
ふいにお兄ちゃんの顔が頭をよぎった。
お兄ちゃん……無事かな。
ベアトリクスさんも一緒だって言ってたし、きっと大丈夫だって信じたいけど。
結局私が生きているということは伝えられていない。
私を追いかけてきてくれたお兄ちゃんと、すれ違ったままお別れするなんて……嫌だ。
次に頭に浮かんだのは、クジャの顔だった。
何も言わず逃げてきてしまったけど、今頃彼はどう思っているだろうか。
このままだとダガー達とクジャが戦うことになる。
クジャのせいで戦争が起こっているし、彼のことは止めなくちゃいけないって私も思ってる。
でも戦わずに……もっと別の方法で解決することはできないのだろうか。
ありがたいことに私はクジャに気に入られているし、私だったら彼を説得できたりしないかな。
短い間ではあるけれど、この世界で私も色々な経験をしてきた。
中途半端にしてきたこともある。
私にはまだ向き合うべきことが残っているんじゃないだろうか。
この世界での、私の『いつか帰るところ』はまだわからない。
でも気がかりなことに向き合うことができれば。
その時、はじめて見つけることができるんじゃないかな。
考えていると、そんな気がしてきた。
まだ戦闘には自信がない。
迷惑をかけてしまうことも多いだろう。
それでも、やっぱり。
向き合うべきことに向き合うために。
この世界での私の居場所を見つけるために。
私もダガー達と一緒に行きたいな。
気づくと、ユウとサウスと共に暮らしている家の前まで帰ってきていた。
窓からはまだ、部屋を灯している明かりがもれている。
決意が揺らがないうちに、二人に話さなくてはならないことがある。
私はひとつ深呼吸をすると、そのドアを開けた。