第13章 いつか帰るところ~黒魔導士の村~
歩を進めていると、前方の民家の扉が開いて、中から見覚えのある小さなシルエットがひょっこりと現れた。
あれは……ビビ?
こんな夜中にどうしたんだろう。
彼の行先が気になり見つめていると、ふと目が合ってしまい慌てて「こんばんは」と私は挨拶をした。
「こ、こんばんは、レイナさん」
「私の名前……」
「あ、ダガーお姉ちゃんに聞いたんだ。昔の知り合いだって」
どうやらダガーが皆に私のことを紹介してくれていたらしい。
おそらく身体に入っていたとか、そのあたりのことは話さず良い感じに説明してくれたんだろう。
「レイナさんもお散歩?」
「うん、ちょっと眠れなくて」
「もしかして、ダガーお姉ちゃんとケンカ、した?」
え!?
どきりと心臓が跳ねる。
何でそう思ったんだろう。
素直に尋ねてみると、ビビはとんがり帽子に手をやり、言葉を探すようにしながら教えてくれた。
「レイナさんのことを話す、お姉ちゃんが……なんか、元気ないみたいだったから」
ダガーは私のことを必要としてくれている。
改めてそう言われているようで、胸がきゅっとしめつけられた。
ビビはどうやら288号さんに用があったらしく、お墓の方へと去っていった。
無理に来る必要はないと言ってくれたけど、ダガーは私に来てほしいと思ってくれている。
私はどうしたら……。
「~~~~……」
「~~~~……」
ビビが出てきた民家から会話のような声が聞こえてきた。
たしかこの家は宿屋だったはず。
ってことは、この声は……ダガーとジタン?
「何かむかしばなしをしてやろうか? そうだな……むかしむかし……」
「またそうやってすぐ……」
壁に近づくと、二人の話し声がわずかにだけど聞こえてくる。
盗み聞きは良くないと思いつつ、つい近寄って耳をそばだてた。
「むかしむかし……自分がどこで生まれたのか……そう、自分の故郷がどこなのか知らない男がいました……」
話を聞いていくとジタンの語り口調から、どうやら彼の過去の話をしているらしいことがわかった。
そこで語られる話によると、ジタンは実の両親を知らず、タンタラスの団長バクーに小さい頃拾われて育てられたのだという。
意外だった。
いつも明るいジタンに、実は肉親がいないなんて。