第13章 いつか帰るところ~黒魔導士の村~
滅多にないダガー達訪問者の存在は、黒魔導士の村にとって大きなイベントごとのようで、夜になるまで村はそわそわと浮足立ったような雰囲気だった。
夕食時にユウと話せば、さっそくビビのことを話題に挙げていた。
「あの小さい子、ビビっていうらしいんだけど、彼らと旅をしていろんなところに行ってるんだって! すごいよね!」
どうやら私達という前例があったおかげか、村の皆も比較的友好的にビビだけでなく皆と接しているらしい。
ユウとサウスの話からそう感じ取れてちょっと安心した。
寝るまでの時間、何もする気が起きなくて、気分転換に少し外を歩くことにした。
ひんやりとした夜の空気の中、虫の鳴き声を耳にしながら夜空を見上げる。
「きれい……」
黒魔導士の村はきれいな場所だ。
大抵の場合天気が良いため、毎日のように夜空には金粉をまぶしたように星々が輝く。
こんな場所にずっと住めたらそれは素敵なことだろう。
自分達の手で一から作ったものに囲まれながら、優しい村の皆と過ごす。
すごく楽しい毎日になると思う。
そう考える一方で、さっきダガーに言われた言葉が頭から離れずにいた。
”レイナも私達と一緒に来ない?”
この村から離れて、ダガー達と一緒に旅に出る。
私にそんなことができるのだろうか。
ダガーは私を必要としてくれていたけど、迷惑をかける未来しか見えないし。
逃げてきたクジャにもう一度対面する決心もついていない。
それに、ユウとサウスを置いて私だけ彼らについていくなんて考えられない。
「やっぱり、私には無理だよね」