第2章 家出騒動
ジタンside.
リフトの上昇する動きに合わせて天井の蓋がタイミングよく開き、オレ達は舞台へと押し上げられる。
華々しい照明と数多の視線が飛び込んできた。
「あとひとーつ!」
マーカスへと処刑のカウントダウンを告げていたレア王が、ぎょっとオレ達を見る。
(ひ、姫さま!?)
オレ達のボスはさすが察しが良いようで、すぐに彼女がガーネット姫であることに気づいたらしい。
隣にいるガーネット姫はというと、今まで頭の中を占めていた別のことは吹っ飛んだようで、口をポカンと開けて周りを見回している。
いつの間にこんな所に、とでも思っているのかな。
ボスの小声に習って、オレも舞台上だけに聞こえる声量で伝えた。
(みんな! このまま芝居を続けてくれ!)
それぞれから目だけで了解の意を得る。
レア王の手下役、ゼネロとべネロに腕を押さえられていたマーカスは、その腕をほどくと、ガーネット姫に向かって「コーネリア!」と呼びかけた。
(恋人役のマーカスだ!)
オレがガーネット姫にそう教えてやると、彼女は口の形を「え」と強ばらせ、マーカスとオレを交互に見た。
この場に本来のコーネリア役であるルビィはいない。
ガーネット姫を舞台に連れてきちゃったからな。
来ちゃったもんは仕方ない。
頑張ってくれよ。
彼女はしばし眉を寄せると、覚悟を決めたようにマーカスへ一歩踏み出した。
「ま、マーカス!」
声が少し震えてるけど、まあ及第点だろう。
むしろ舞台経験なんてないだろうに、一生懸命声を出している様子にかなり好感が持てる。
(そうそう、その調子!)
ガーネット姫は緊張した面持ちでこちらに頷いてみせた。
(よし! しばらくは芝居を続けよう、ブラネ女王も観てるはずだしな!)
ちなみにこの間、現状が掴めてないらしい中年兵士のことは置き去りだ。