第2章 家出騒動
ジタンside.
オレは再び目の前で慌てている姫を見る。
こりゃかわいいな。
彼女の反応を楽しんでいたい欲望にかられるが、そうも言っていられない。
オレはガーネット姫の膝裏を持ち上げ、所為お姫様だっこでこの部屋を抜け出すことにした。
「ありがとうございました」
やっとこさ隣の部屋までやってきてガーネット姫を降ろすと、彼女にえらく感謝された。
その頬は若干染まっている。
これは……惚れられたかな?
アレクサンドリアの姫様にまでモテてしまうなんて、オレの魅力はリンドブルムに留まらないってことだ。
なんてふざけたことを考えてる場合じゃないな。
真面目にこの先のことを考えないと。
やってきた部屋は行き止まりだった。
ちょうど真上が舞台となっているようで、音が漏れ聞こえてくる。
鐘の鳴り響く様子から物語もクライマックス。
そして自分の出番ももうそろそろ。
どうしたもんか、と唸っていると、同じくブリ虫地帯から抜け出たシナに声をかけられる。
「ジタン! No.2に乗るずら!」
No.2、とはリフト状の舞台へ上がる機械番号のことだけど。
劇に出ようにもガーネット姫を置いていくわけには……
いや、待てよ。
「ヨシッ! ガーネット姫、こっちだ!」
なぜだか焦ったように表情を固まらせているガーネット姫を引っ張って、No.2へ乗る。
昇っていく景色の隙間から、シナを押しのけオレ達の隣のリフトに乗る中年兵士の姿がちらりと見えた。
あのおっさん、分かってんのか?
このリフトが舞台に上がる装置だってことに。
まあなんとかするしかないな。