第13章 いつか帰るところ~黒魔導士の村~
ダガー達はクジャを止めるためにここまで来たんだ。
私の胸元でチャリとネックレスが揺れる。
なんとなく捨てることもできず、つけっぱなしになっていたクジャからもらったネックレス。
ふと優しく撫でられた彼の細い手を思い出して……慌てて首を振る。
クジャを倒して、彼の目論見を止める。
そうした方がいいって私も思ってる。
彼が私に優しくしたのは、自分の所有物に対する愛情だったのだから、私が気にする理由なんて一ミリだってない。
でも彼から逃げてきた今でも時折考える。
クジャはなんでブラネ女王をそそのかしたりするんだろう。
彼はアレクサンダーという強力な召喚石を手に入れるためって言ってたけど、そんなものを手に入れなくったってクジャは十分に強い。
確か彼はガーランドっていう人を憎らしく思っているみたいだったけど……。
その人を倒すため?
ガーランドって誰?
「私達は明日にはこの村を立とうと思うわ」
「そっか、早くクジャを見つけないとだもんね」
「ねえ、レイナも私達と一緒に来ない?」
「え?」
「レイナはクジャと一緒に過ごしていたのでしょう? 私達よりもクジャの考えを読めるんじゃないかしら」
ダガー達と一緒に旅をする。
かつてジタンやビビ、スタイナーと共にリンドブルムまで冒険した日々を思い出した。
けして長くはなかったけど、それはいつまでも忘れらない思い出として私の記憶の中で生き続けている。
けど今回の旅の目的地はクジャだ。
まだ私の中で、どのような気持ちでクジャに向き合えば良いのか整理がついていない。
それにユウやサウスのことも気にかかる。
助けてくれた黒魔導士の村の人たちへの恩返しも。
私が言葉に詰まっていると、ダガーは寂しそうな表情をした。
「急にこんなことを言ってごめんなさい。クジャの考えが分かるだろうなんて建前で、本当はまたレイナと一緒に旅をしたかっただけなの」
「ダガー……」
「レイナもここで新しい人生を歩み始めているのだものね。無理に私達についてくる必要はないわ」
ダガーの言葉に私は何も言い返すことができなかった。
「全て終わったらまたレイナに会いにくるわ」
そう言って去っていくダガーの背中を、私は引き留めることができなかった。