第13章 いつか帰るところ~黒魔導士の村~
村のみんなは突然の人間の訪問者に驚いているらしい。
ジタン達は私のことをクジャと関係があるんじゃないかって疑っている。
割と混沌としてるこの場を、どうやって収集させよう……。
私の小さな脳みそをフル回転させていると、混乱を極めているこの場をさらにややこしくさせるような声がダガーからあがった。
「レイナ……? って、もしかして……」
ダガーはそれだけ言うと、言葉を失ったように驚いた視線で私を射抜く。
上から下まで視線を動かし、再び私の目と合わさり私の胸はどきりとはねる。
ダガーの瞳はわずかだけど期待に揺れているように見えた。
ここで私のキャパはオーバーした。
固まっていたユウの腕をむんずと掴み、村の中へと駆け込む。
「わ、わ、レイナ!?」
私が急にユウのことを引っ張ったもんだからユウが慌てたような声を出していたけど、気にしてられない。
ダガー達も何か言っていた気がするけど、それも気にしてられない。
皆が見えないところまで来ると、私はようやく息をついた。
結局逃げてきてしまった。
けど、私の対応力では、あの場を切り抜ける方法は逃げるくらいしか思いつかなかった。
結局クジャと関係ないって言えずじまいになってしまった。
あとで改めてダガー達のところに話に行かないと。
ふと目の前のユウが不安そうな顔をしていた。
「…………」
とりあえずは村のみんなに、ダガー達は”大丈夫”って伝えなきゃ、だよね。
「彼らは私の知り合いなの。彼らはそのことに気づいてないけど」
言葉の外に、だから大丈夫だよ、と意味を含ませてそう言うと、ユウはすぐに顔色をいつものものに変えた。
「レイナの知り合いだったんだ! なら、大丈夫だね」
ユウの、のんびりとしたような笑顔。
私の知り合い。
だから、大丈夫。
その言葉は私を信頼しているからこそ出たもの。
すごく……すごく嬉しくて、胸が温かいもので包まれる。
「僕、村のみんなに、今来た人間がレイナの知り合いだって伝えてくる!」
ぱっと表情を明るくさせたユウは、その言葉通り近くの黒魔導士に話しかけにいった。
(私も村のみんなに事情を説明しに行こう。ダガーのことはその後)
彼の背中を見送り、私も反対方向へと急ぐ。