第13章 いつか帰るところ~黒魔導士の村~
「ま、待って!」
突然現れた人間の姿に驚いたのか。
目の前の黒魔導士は村の中に逃げるように走っていってしまい、それを追いかけるようにビビも私の横を通り過ぎていった。
「こんな森の奥に村があるなんてなあ~」
手に持った武器を鞘に納めながら、ジタンが村を見渡し呟く。
ダガーも物珍し気にきょろきょろと視線を揺らしている。
そんな皆をよそに、私は内心プチパニック中であった。
え、なんでみんながここに!?
ここ外側の大陸なんだよね!?
ていうか、この村特殊な魔法で守られてるんじゃなかったの!?
色々思考を巡らせてみても、皆がここにいる理由はさっぱり分からない。
ぴくりとも動かずに来訪者をじーっと見つめていた私は、みんなの目にはさぞ不審に映っただろう。
乱心している私を外に出さなかっただけ褒めてほしい。
「おーい、お姉さん?」
はっ!!
怪訝な顔をしたジタンが私の目の前で手をふりふり。
ごめんなさい、いったん落ちつきます。
心の中ですう、はあ、と深呼吸をしていると、ジタンが思わぬ冗談を言ってきた。
「もしかしてオレがかっこよくて見とれてた?」
「え……っと、それは違うかな?」
今は皆が現れたことに驚いてたよ。
ジタンのことは普通にかっこいいと思ってるけどね。
だから、その、そんなあからさまに肩落とさないで?
がっくしと肩を落としているジタンに私は思わず苦笑する。
そういえばそうだった。
ジタンってこういう冗談を言う人だったよね。
だからこそ、ジタンは人と打ち解けるのが早い。
以前一緒に旅をしていた時も、こういうジタンに何度も助けられた記憶がある。
不思議と、さっきまで慌てふためていた頭が少し落ち着いてきた気がする。
「どうして枯れた森の中にこんな村が?」
相変わらず村の方に視線を向けているダガーが不思議そうに私へと質問を投げかけてきた。
枯れた森の中?
黒魔導士の村は青々とした針葉樹林に囲まれた村だ。
今見渡してみても枯れた木はないけど……。
あ、外部から見つからないように特殊な魔法がかけられてるって言ってたのが、もしかしてそれなのかな?
外からは枯れた森に見える魔法がかけられてる、とか?