第13章 いつか帰るところ~黒魔導士の村~
そんなことをぼんやり考えていると、見つめていた先の木々がぐにゃりとした光を一瞬放った。
外に買い出しに行ってた誰かが帰ってきたんだ。
しばらくすると予想通り、荷袋を肩に担いだ黒魔導士が森の奥から姿を現す。
そんな彼にお疲れの意味をこめて、やっほーと軽く手を振った。
「おかえり、いいものは買えた?」
「ただいま~。それがさ、今回はあんまり思うように買えなくって」
「え? 何かあったの?」
「ニンゲンがいたんだよ。ドワーフの里に。びっくりして僕急いで帰ってきちゃった」
人間?
外側の大陸にはほとんど住んでないって聞いたけど、ゼロってわけじゃなかったんだ。
どんな人だったんだろう。
興味本位で聞いてみようかと思ったとき、タッタッタッとこちらに駆け寄る足音が聞こえた。
響く足音は村の中からじゃなくて、森の方から。
「ん?」
目の前の黒魔導士ごしに、森の奥へと目を凝らす。
そして私はぎょっと目を見開いた。
「ねぇ、待って!」
買い出しに行った黒魔導士の彼を追いかけてきたのだろうか。
そんなことを言いながら、やってきたのは。
――現れたのは……。
黒魔導士の村にいるみんなをぎゅっと小さくしたような。
小ぶりのとんがり帽子の下、暗闇の中でつぶらな瞳が光っている。
――ビビ……?
なんでこんなところに……!?
私の不自然な視線に気づいたのか、目の前の黒魔導士の彼も後ろを振り返って、そして面白いくらいにその体を跳ねさせた。
「ニ、ニ、ニ……ニンゲン!?」
ビビに続いて、現れた人影が三つ。
もちろん、それらは私のよく知る顔ぶれ。
美しい黒髪をなびかせるのはダガー。
さっきまで対敵していたのか、片手サイズの武器を振るって鞘に納めているのは、ジタンだ。
あ、一人知らない人がいる。
コック帽子にエプロンをつけているので料理人……?
にしてもだいぶ大柄。
なんで皆がいるの!?