第2章 家出騒動
ジタンside.
誘拐作戦も大詰め。
ガーネット姫となぜか意気投合して、城の兵士たちから逃げているときだった。
プルート隊員に変装していたブランクが技をもろに受けたせいで、懐に忍ばせていた大量のブリ虫たちが放たれてしまった。
そのせいで部屋の中はプチパニック状態。
さっきまで行く手を阻んでいた中年の兵士まで、この惨状に慌てふためいている。
「さっ、今のうちだ! ガーネットひ、め……」
今が好機だと彼女に呼びかけたオレだったが、ものすごい混乱っぷりの姫が視界に入った。
あれではオレの声なんて聞こえていないだろう。
今までの気品溢れる王女はどこへいったんだ、って言いたくなるくらいの取り乱しよう。
そんなことを思っていると、オレに向かって彼女が危機迫った表情で走ってきた。
避けてもよかったけど、このまま一緒に逃げればいいか、と俺はガーネット姫を抱きとめる。
役得だな、と思っていればさらに彼女がオレに抱き縋ってきて。
さすがに予想してなかったことに焦る。
「えーと……ガーネット姫さま?」
オレだって気づいてないのかな。
それより、そんなに密着されると、色々と困るんだけど。
ようやく顔を上げた彼女の濡れた瞳は驚きに見開かれた。
そして慌てて俺から体を離したと思うと、後ろを通り過ぎたブリ虫に驚き、またオレの胸にすっぽりと収まる。
慌ただしいな。
国の王女様であってもブリ虫は苦手らしい。
余裕がないからか、さっきから素……なのかな?
王女らしくない一面が丸出しである。
少し意外だった。
以前に誘拐作戦の下見で姫を見かけた時と印象がずいぶん違う。
それは今日、姫と出会ってからずっと感じていたことでもあった。
まあ、下見の時は遠くからちらっと見ただけだけど。