第12章 安息の地を求めて
こういう演説みたいなことは慣れていないし、どちらかと言うと苦手だ。
でもここで尻込みして私への不満の声を聞かなかったことにしてしまうのはきっと良くない。
相手に受け入れてほしければ、こちらから歩み寄る努力をしなくては!
「私たちを助けてくれてありがとう。すごく感謝してるし、助けてもらえなかったら今頃生きていないと思う。あなたたちは命の恩人みたいなもので、危害を加えるつもりは全くない、です」
緊張していたからか、少し口調がかたくなってしまっただろうか。
喋り方が多少下手だとしても、伝えたいことはちゃんと伝えないと。
「だから……」
恐がらないで、と続けようとして、黙って聞いていた彼らのうちの一人が口を開いた。
「ニンゲンの言うことなんて信じられない! どうせ僕らの村をめちゃくちゃにする気なんだ!」
胸に留めていた言葉を吐き出すようにこちらに叩きつけてきたのは、最初から私に対して不満を口にしていた方の彼だった。
「そんなこと、しないよ」
「あの二人のことだって騙してたんでしょ! そうだ、騙して僕らの村に来るように仕向けたんだ! ニンゲンはいつだってそうだ」
「そんな……ユウとサウスは大切な……」
ショックだった。
私が人間だから信用できないって話なら、まだ受け止める準備はできていたけど、まさか二人の事を引き合いに出されるなんて。
この村の人たちには、そういう風に見られていたのかな。
予想外の角度からの非難に呆然としていると、ずっと成り行きを見守っていたもう一人の黒魔導士が沈黙を破った。
「さすがに失礼だよ。彼女は助けた僕らにお礼を言ってくれてる。悪い人じゃないよ」
ぴしゃりとした物言いに、今まで肩を怒らせていた黒魔導士が口をつぐんで俯いた。
その態度の変わりように驚く。
もしかしたら彼はこの村でも発言力がある立場にいるのかもしれない。
「だって、だって……」
もごもごと何事か口の中で呟くと、俯いていた彼は急に踵を返すとその場から駆け出していってしまった。
「僕の仲間がごめんね。悪気はないんだ。ただ、必要以上に怖がりなだけで」
「いいえ、私が悪いので……」
私が人間で、こんな見た目をしているのがいけない。
それぞれがあるべき場所にあるように、私はこの場所にいるべきじゃないのだろう。