第12章 安息の地を求めて
ダガーside.
召喚獣の攻撃を受けたリンドブルムの城下町は見るも無残な様子になり果ててしまっていた。
所せましに並んでいた家々は、今では半分以上が崩壊し、あちこちから火の手があがっている。
「ひどい有り様だわ……」
「そうだな」
リンドブルムの大公殿下であるシドおじさまは、アレクサンドリアに降伏を宣言した。
アレクサンドリアのレッドローズ艇はリンドブルム城内に停泊し、城下町では我が物顔のアレクサンドリア兵が歩いていた。
「ダガー、怪しまれないうちに必要なものだけ買いそろえよう」
隣を歩くジタンがひそりと耳打つ。
ジタンもわたしもアレクサンドリア兵に見つかると困る立場だから目立ってはいけない。
それでもこれから大陸を渡るため、ちゃんとした買い物をここでしておきたい。
シドおじさまが言うには霧の大陸にある採掘場が外の大陸に続いているらしい。
リンドブルムの近くにある沼地に入口があり、採掘場には野生のガルガントがいるとか。
「これから向かう沼地にジタンの仲間がいるのよね?」
「クイナって言うんだ。ちょっと変わった奴だけど、悪い奴じゃない」
ジタンは本当に顔が広いと思う。
わたしが知らない様々なことを彼は知っている。
アレクサンドリアから家出したことからはじまり、ジタンには様々な場面で助けてもらってしまった。
レイナやジタンにはじまり、本当に多くの人に助けられて今自分はいると思う。
これから会うであろう、クイナもきっとそのうちの一人になってくれる。
炎があがる家の支柱に水をかける人。
怪我した足をひきずって歩く人。
これらの惨状を生み出したのはわたしの母親だ。
わたしにできること。
わたしにしかできないこと。
何度も考えてきた。
「かならずクジャを見つけだして、今度こそとめましょう」
わたしがそう言うと、ジタンは深く頷いた。