第12章 安息の地を求めて
「うーん……」
目の前のとんがり帽子の彼の背後。
もう一人の黒魔導士が伸びをしながら体を起こす。
え、目の前のこの子がユウじゃないとしたら、
こっちがサウスってこと?
で、奥で伸びをしてるのがユウ……?
「おはよう~」
「ユウ?」
「はーい、なに?」
寝ぼけ眼で返事をする、奥の彼。
私はぎゅんと音がしそうな速さで目の前の彼、もといサウスに目線を戻した。
「サウス、喋れるようになったの!?」
私の大声にびくりと体を揺らすサウス。
ユウが「え、なになに?」とこっちに近づいてくる。
「サウスもしゃべれるようになったの?」
ぱああと瞳を輝かせるユウ。
私も驚いたようにサウスを見ると、彼は警戒するように体を固くしていた。
期待のこもったユウの視線から逃れるように、サウスがじりっと後ずさる。
こちらを凝視していたサウスは、耐えられないというようにすくっと立ち上がると脱兎のごとく水辺の方へ駆け出した。
「ぼくサウスとはなしてくる」
追いかけるように、ユウも立ち上がる。
あんなに嬉しそうなユウははじめてだ。
遠くの二人を見ていると、話しかけるユウにサウスは困っているようにぽつりぽつりと返している。
喋れるようになったサウスは、警戒はしているみたいだけど敵意はないみたい。
警戒している、というか困惑?
「よかった……のかな?」
それからしばらくして、私たちは上流に向かって進むことにした。
どこにたどり着くかはわからない。
とりあえずは地上を目指して。
地上に出られたら、街へ行きたい。
そこに、クジャがいないといい。
行くべき先なんてわからないけど、とにかく進むしか私たちには選択肢がない。
私たちにとっての安息の地なんてあるのだろうか。