第2章 家出騒動
「ん?」
ぎゅっと埋めていた顔を上げると、変な表情のジタンと至近距離で目が合う。
「にょわああっ!!」
ジタンだった。
今まで私がしがみついていたのはジタンの胸だった。
慌てて身体を離した私だったけど、後ろから嫌な音が近づいてきて、
「ひえええ~!」
再びジタンの胸に戻る。
近づく虫を武器で払ってくれるジタン。
顔を守るのと、カアーッと赤くなった顔を隠すのとで顔を上げられない。
どうしようもなく居たたまれないでいると、身体がふわりと浮いた。
「顔は手で守っとけよ!」
お姫様だっこだ!!
そう気づいた時にはサラリとした金髪が頬をくすぐって、それだけでドキドキと緊張する。
意外と筋肉質なジタンの腕の中。
初めての体験に感動していると、あっという間に虫の大軍ゾーンを抜けた。
「よっと」
隣の部屋へ入ると、ジタンは私を降ろしてくれた。
「もうブリ虫はいないから、安心していいぜ!」
私を気遣ってか、そんな言葉までかけてくれるジタン。
ムクムクと感激の念が膨れ上がる。
もうね、私の中のジタン株が急上昇だよ。
お姫様だっこであの地獄から助けてくれるとか、なにそれカッコよすぎ。
「あの、ありがとうございました」
最大の感謝を込めてジタンにお礼を告げれば、彼は人懐っこい笑みを浮かべた。
いやあ、これは女の子達が放っておかないだろうなぁ。
笑顔が眩しい。
「ジタン! No.2に乗るずら!」
しみじみとそんなことを考えていると、シナの声が部屋に響いた。
そこで思い出す。
そうだ、私ってば今ガーネットだった!!
うわ、どうしよう……
すごい叫んだりしちゃったよ!?
あたふたと私が内心頭を抱えていると、ジタンに腕を引かれる。
そして何かの機械に乗ったかと思うと流されるがままに私達は上昇したのだった。