第11章 ターニング
この前散歩したときにも思ったことだけど。
クジャの家は非常に構造がつかみにくい。
その原因は、屋敷内の各所に設置されている青白い魔法陣にある。
クジャの屋敷は廊下がほとんどない構造で、特定の場所に行くためには魔法陣をのりついでいく必要がある。
魔法陣で移動するたびに全く知らない場所に行ってしまうことを考えると、目的の場所に辿りつくためには運に頼るしかない。
屋敷の中を歩く黒魔導士達の姿を物陰からのぞきながら、私とユウは慎重に歩いていく。
もし見つかったら……。
さっき武器庫のようなところで手に入れたダガーナイフをきゅっと握りしめる。
いざとなったら、私も戦わなくちゃ。
ユウにばかり任せるわけにはいかない。
後ろでユウが「あ……」と声を上げた。
「あれ、サウスだ」
「え、どれ?」
「あそこで、きょろきょろしてるの」
私達が身を潜めている物陰から、十メートルほどさき。
一人の黒魔導士がきょろきょろととんがり帽子を揺らしているのがたしかに見える。
それにしても、見た目に差がない彼らの中から、サウスだって見分けられるのがすごい。
それとも私がわからないだけで、実際には少し違ってたりするのかな。
日本人が外国人の顔を見分けにくいのと一緒なのかも。
「私達がいなくなったことにもう気づいたのかな」
「そうかも……ねえ、レイナ……」
「うん?」
ユウが真面目なトーンで話しかけてくる。
「やっぱりサウスもいっしょに……にげられないかな……?」
「……サウスはたぶん私達を見つけたら攻撃してくるよ」
「そうかもしれないんだけど……」
ユウはサウスがどうにも心残りらしい。
私の世話役として割り振られた二人だし、ユウにとってサウスは特別な存在なのかもしれない。
サウスも一緒に逃げられたらって私も思うけど。
でも今の彼はわかってくれないんじゃないかな。
ユウに何て言おうか逡巡していると、私達のすぐそばに一つの影が現れた。
「あ……」
顔を上げると、手のひらを炎でまとったサウスの姿があった。